モバイル開発で陥りがちな 6 つの落とし穴にはまらないために

本記事は、マイクロソフト本社の The Visual Studio Blog の記事を抄訳したものです。【元記事】 Avoid these six mobile development pitfalls 2017/3/3

 

このシリーズの前回の記事では、モバイル アプリの活用に必要な 3 つの変革についてご紹介しました。今日のモバイル アプリ競争を勝ち抜くためには、ニーズへの対応やリリース後の修正などでありがちな課題に戦略的に取り組む必要があります。ここでは、よくある 6 つの課題についてご紹介します。

なお、これらの課題に対する業界リーダーの取り組みについては、電子ブック『モバイルで競争を優位に: モバイル DevOps とクラウドでアプリを差別化する方法 (英語)』をご覧ください。

課題 1: アプリに対するニーズが増加

爆発的なモバイルの普及により、企業では、ビジネス関係者、顧客、従業員に優れたモバイル エクスペリエンスを提供しなければならなくなりました。International Data Corporation (IDC) によると、2018 年までに、企業のモバイル アプリの数は 2 倍に膨らみ、IT 予算にモバイル関連が占める割合は 50% にもなるとされています1

モバイル アプリに対するユーザーのニーズがさらに増え、自社で提供できる範囲を超えた場合、企業はどのように対応すればよいでしょうか?

まずやるべきことは、現状のインフラストラクチャで、多様なデバイス、シナリオ、ユーザーに対応した高品質アプリを迅速かつ継続的に構築できるのかどうかを判断することです。チーム編成、テクノロジへの投資など、既存のリソースや社内プロセスを見直す必要があります。

課題 2: 人手不足

Forrester が 2014 年に行った調査によると、調査対象の半分の企業では、社内開発者が 5 人もおらず、独立したモバイル開発チームを維持することもできないという結果が出ました2。2017 年の今、主なプラットフォームごとに開発、テスト、保守を行う開発者が足りているのか、もっと人材を増やす必要があるのか、そして、その人材が新しい言語、ツール、プラットフォームに対応するために何らかのトレーニングが必要なのかを把握する必要があります。

課題 3: デバイスが多様化

ユーザーが使用するデバイスを開発側が指定することはできません。そのため、開発側としてはできるだけ多くの種類のフォーム ファクター、オペレーティング システム、ハードウェア構成で問題なく動作するアプリを開発する必要があります。しかし、さまざまな種類のオペレーティング システムを更新したり、多様化するデバイスを管理するのにはコストがかかります。Android デバイスの種類だけでも、2013 年から 2015 年までに 2 倍に増加しました3。それに加え、ユーザーはシームレスなエクスペリエンスが提供されることを期待するようになっています。

課題 4: 適切なテストと品質管理

モバイル アプリの品質管理は導入やエンゲージメントにとって重要な要素ですが、リリース サイクルが複雑化する要因ともなっています。手作業でのテストは、コストも手間もかかるため、リリース サイクルに合わせて短縮することができません。また、対応できるデバイスも限られてしまうため、長期的な解決策とは言えません。シミュレーターを使用すれば、対応可能なデバイスが増え、一見コストを削減できるように見えますが、シミュレーターでは実際のハードウェア運用構成を忠実に再現できないため、セキュリティ ホールに気付けないおそれが出てきます。

ユーザーのニーズに応え、期待以上のアプリをリリースするためには、UI テストの自動化とベータ版の配布が不可欠です。アプリが期待どおり動作することをすばやく検証し、問題が見つかれば優先順位を付け、社内外のテスト担当者に拡散しフィードバックや意見を収集する必要があります。開発チームがリリース プロセスの早い段階で問題を認識できれば、不具合のあるコードに新機能を追加してしまうような事態を防ぎ、品質保証チームは優先度の高い問題から修正に着手できます。

課題 5: セキュリティに関する技術革新

最高のアプリ エクスペリエンスとは、ユーザー エクスペリエンスが良ければいいというものではありません。優れたアプリには、ユーザーのニーズ、操作、環境に応じてプロアクティブな提案やパーソナライズされた通知などを行う便利な機能が必要です。また、従来のアプリと同様にローカルやクラウドのファイル、サービス、システムにアクセスできるよう、信頼性と安全性を確保する必要があります。これらの要件をクリアしたうえで、コンテキストに応じたプッシュ通知やオフライン データ同期などの独自の機能が求められます。また、アプリのリリース時には、このインフラストラクチャが膨大なユーザー数に合わせてスケーリングできることが重要です。

クラウドやハイブリッド クラウドのテクノロジは、組織のシステムを安全に接続できると同時に、ユーザーが外出先からいつでも生産的にアクセス可能です。また、クラウド プラットフォームならオフライン アクセスやプッシュ機能を使用して大規模な更新が可能なうえ、アクセス許可の管理やユーザー認証などの重要なセキュリティ サービスも利用できます。

課題 6: リリース後の改善

アプリをリリースすることだけに集中してしまい、リリース後の保守や分析がおろそかになるのはよくあることです。これでは、品質の高い保守に不可欠なフィードバック ループの継続が損なわれる原因となります。アプリが (更新されないことで) 利用されなくなると、それまでの投資が無駄になってしまいます。

先々の改善点にしっかり対応するためには、リリース後の分析が重要です。アプリの使用状況を監視することで、ユーザーが求める主要サービスの範囲を明確に把握でき、デバイスのデータやユーザーのフィードバックを基に新機能や不具合の特定と優先順位付けを行うことができます。その結果、継続的にユーザーやビジネスに価値を提供できるようになります。

モバイル DevOps とクラウドでこれらの課題を克服

マイクロソフトのモバイル DevOps テクノロジとクラウド プラットフォームは、このような一般的な落とし穴にはまらないようにするだけでなく、ユーザーが満足するアプリを継続的に提供し、ビジネスを前進させるのに効果的なソリューションです。モバイル DevOps テクノロジを採用することで、計画から継続的な改良までのモバイル ライフサイクルのあらゆる段階が自動化され、クラウド サービスへの安全な接続、ユーザーが求める機能の迅速な提供、さらには、あらゆるシナリオに合わせたスケーリングを実現できます。

企業の競争力強化に対するマイクロソフトの取り組みについては、電子ブック『モバイルで競争を優位に: モバイル DevOps とクラウドでアプリを差別化する方法 (英語)』をご覧ください。

Cormac Foster (シニア製品マーケティング マネージャー)Cormac Foster はモバイル製品マーケティングを担当しています。マイクロソフトに移籍する前は Xamarin に勤務し、アナリスト関係管理およびソート リーダーシップを担当していました。また、Xamarin で勤務する以前はソフトウェアのテスト、研究、マーケティングなどさまざまな業務を担当していました。

参考資料

  1. IDC、「IDC FutureScape: Worldwide Mobility 2017 Predictions」2016 年 11 月 (https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=US41334316、英語)
  2. Forrester レポート、「The State of Mobile App Development: Few eBusiness Teams Keep Pace With Customer App Expectations」2015 年 3 月 23 日 (https://www.forrester.com/report/The+State+Of+Mobile+App+Development/-/E-RES120267、英語)
  3. OpenSignal、「Android Fragmentation Visualized」レポート、2015 年 8 月 (https://opensignal.com/reports/2015/08/android-fragmentation/、英語)